これは今まで見たこともない小説でした。
最後の最後に向かって物語は静かに進行します。★★★ 「アガタイトの葬列」 クレイ・レイノルズ 1986 新潮文庫 すっかり寂れてしまった田舎町アガタイト、事件らしい事件もないそんな喉かな町で、うだるような暑さの中、理髪店の屋外便所に吊るされている若い女性の死体が発見される。 かっての名残をとどめているのはマニキュアの塗られた爪ぐらいだったが、奇妙なことにそのうちの三本だけがすっぱりと切り落とされていた。 本書には三つの大きな軸がある。 一つは保安官エイブル・ニューサムを中心とした、殺人事件の捜査模様。 もう一つは恋人を妊娠させ、町から逃げ出したブリードラヴ青年の二十年にわたる転落の軌跡。 そこへ牧師、金物屋、牧場主といったアガタイトで暮らす人々の生活模様が挿入されていく。 死体の身元はやがて判明する。 しかし、被害者の黒く萎びた姿と周囲に漂っていた死臭を忘れることができないエイブルは、捜査がそれ以上進展しないこともあって、次第に焦りを募らせていく。 そうこうするうちに、プールで溺れ死んだ男の葬儀が行われることになる。 町を挙げての大掛かりなものだ。 だが、今まさに、大いなる破局に向かってすべてが動き始めているのを、エイブルを含め町の人はまだ誰も気づいてはいなかった。 どうしようもない破局に向かうさまは「シンプル・プラン」を思い出してしまう。 よくもまあこんな小説を書けるものだ!
by biomasa
| 2005-01-08 10:45
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