奇妙な味、この人の作品はそう言われています。
短篇集で★★★★はいいほうです。 「あなたに似た人」 ロアルド・ダール 1953 ハヤカワ文庫 大富豪が、自分の娘を賭けて、稀代の美食家とワインの銘柄を当てる利き酒ゲームをする。 「それではと、メドックのどの自治区の産か? これまた、消去法により、そう苦労せずに判定できる。マルゴオ? ちがう、マルゴオではありえない。 マルゴオの、あの強烈な芳香なし。ポイヤック? ポイヤックでもない、ポイヤックにしては、感じがやさしすぎるし、おとなしくて、なにか思いつめている」 と美食家はしゃべりながら、ワインの地方名、村名、葡萄園の棚まであててゆく。ぺちゃぺちゃと舌なめずりの音が聞こえてくるような筆致で美食のグロテスクを描き、異様なスリルに満ちている。 奇妙な賭けが南から来た男とアメリカ人の士官候補生の間で始まった。 ライターで10回、一度もミスしないで火をつけられるか、というものだ。 賭ける物は南から来た男がキャディラック。アメリカ人のほうは小指だ。 アメリカ人はライターをつける。 「ワン!」「ツウ!」「スリー!」……「エイト!」まで数えたとき……。 賭博にのめり込む人間の心理、心に潜む恐ろしさ、そして人間の想像力の中で発酵し、育成される幻想と恐怖―― これらを奇妙なユーモアでくるんだダ―ルの短編小説の15篇がひとつひとつ矢になって読むものの心に突きささる。 そして小さいが深い傷痕をのこさずにはおかない。 収録作品は「味」「おとなしい兇器」「南から来た男」「兵隊」「わがいとしき妻よ、わが鳩よ」「海の中へ」「韋駄天のフォックスリイ」「皮膚」「毒」「お願い」「首」「音響捕獲機」「告別」「偉大なる自動文章製造機」「クロウドの犬」
by biomasa
| 2004-08-06 10:58
| ★★★★
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