小さな町の数日の出来事、感情移入を極端に押さえた文章、
これぞハメットのハードボイルド。★★★ 「ガラスの鍵」 ダシール・ハメット 1931 創元推理文庫 主人公のネド・ボーモンは長くつきに見放された賭博師だ。 その彼は久しぶりに当てたレースの金を取り立てようとして事件に巻き込まれていく。 そして彼はなんと地方検事局の特別捜査官に任命されるのだ。 力の論理だけが支配している小さな町を舞台にして、上院選挙を前にした親友のボスが、恋焦がれる上院の娘と自分の娘のために自ら陥穽に落ちてゆく。 ネドは敵対するふたりのボスにふりまわされ親友のボスを突き放しながらも助けることになるのだ。 激情も憤怒もなく、恨みも復讐もない。 推理もかけひきもなく、ためらいのない確信だけでネドは戦う。 嚇しにも暴力にも罵倒にも、時には懐柔や女の愛にさえもネドは逃げることも見得を切って立ち向かうこともしない。 いつもリングの外から眺めているような飄々とした顔つきでいながら相手は彼に突き崩されていく。 自分の金を取り戻すことしか関心がなく、未練もなく町を捨てていく男だけができる生き方だ。
by biomasa
| 2004-12-24 11:58
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